ISDN終了とEDIで実現するサプライチェーンDXのヒント
次世代EDI基盤への移行メリットとは?
2024年問題と転換期を迎えるEDI基盤
2024年1月にNTT東日本とNTT西日本が提供しているISDNサービス「INSネットディジタル通信モード(以下:ISDNサービス)」が、固定電話網から光回線と繋がるIP網への移行が開始され2025年1月までにISDNサービスが廃止される予定です。特に法人企業では以前より多く利用されているISDNサービス終了にともない、回線の見直しと合わせて企業間データ連携システムであるEDIの見直しや移行を多くの大手企業が進めています。EDIの見直しや移行は取引先との調整や確認も必要なことから、検討から実装まで多くの時間を要するため、現在未検討の企業には早期な対応が迫られています。
同時に、新型コロナウイルスの拡大によってビジネス環境が一変し、急速なデジタル変革が進む中、受発注業務や取引に求められるEDI基盤のあり方も大きく変化する動きが出始めています。
本記事では、ISDNサービス終了に伴う影響と対策、将来を見据えたEDI基盤の刷新を実現するためのポイントとベストプラクティスを解説していきます。
ISDNサービス終了によるEDIへの影響
ISDNサービスとは、主にデータ伝送に特化した通信モードのことで、POS、銀行との電子バンキング(EB)、そしてEDI(電子商取引)に利用されています。今回のISDNサービスの終了にともない、伝送途中でアナログデータが変換機を使ってIPパケットへ変換を行うプロセスが入るため、最大4倍程度の通信遅延が発生することがわかっています。取引先やサプライヤーとの受発注業務で利用されるEDIや銀行との決済など重要なデータ通信に遅延が発生し、出荷や納品などお客さまに多大な影響を及ぼすことは想像に難しくありませんので注意が必要です。
以下は、対象サービス毎の2024年1月以降のサービス利用可否の一覧となります。
電話回線を利用した旧来のEDIから、インターネットEDIへのリプレイスを検討される企業も多いと思われますが、通信回線を切り替えて維持するだけで充分でしょうか?
昨今の企業における調達・物流・購買・販売などのサプライチェーン業務では多様化する業務要件に迅速に対応出来るようオペレーションの自動化やプロセスの可視化は重要であり、100%デジタル化が必要不可欠となってきています。また、有事によるサプライチェーン業務が寸断された際に、早期に回復するためのレジリエントな考え方を取り入れていくことも必要です。
サプライチェーンDX実現に向けた第一歩
ISDNサービス終了による2024年問題により、多くの企業でEDIシステムの見直しや移行が急務となりますが、この大きなタイミングを好機と捉え、いまあるサプライチェーン領域の課題を解決し、業務のパフォーマンスを改善すれば、将来的なビジネスに大きく貢献することは間違いありません。そのためには、企業における「サプライチェーンを高度化」していく必要があります。
オープンテキストでは、長年のB2Bビジネスの経験則をベースに、サプライチェーンの高度化を4つの段階的なステップとして体系化し、高度化に向けた解決策を示しています。
第一段階は、「サプライチェーンデジタル化」が必要です。電話やメール、FAXなどによるマニュアル作業を削減するとともに、紙ベースのプロセスを撤廃し、すべてのサプライチェーンにかかわるデータを100%デジタル化して管理できる状態にすることです。
第二段階が「サプライチェーンDX」です。デジタル化されたデータを生かし、社内外のエコシステム全体を可視化あるいは自動化により、業務プロセスを横断的に管理し、全体最適化を図っていくことが必要です。
更に、将来的には第三段階、第四段階として、自然災害などによるインシデントから迅速な回復を目指す「サプライチェーンレジリエンス」、そしてエシカル(倫理的)な取引先労働環境や環境負荷の状況を管理する「エシカルサプライチェーン」、これらを統合的に適合(アダプティブ)するサプライチェーン環境構築を実現する「アダプティブサプライチェーン」といった進め方が必要となります。
こうしたサプライチェーンの高度化を進めていく上で欠かせないのが、サプライチェーンデジタル化、サプライチェーンDXを支援する「第3世代サプライチェーンプラットフォーム」です。第3世代では調達領域といった特定領域だけではなく、販売、物流といったサプライチェーン全体を通して同一基盤上でデジタル化されサプライヤー、取引先、顧客とのやり取りをすべて集約できるため、これまで部分最適であった業務効率化だけではなく、「経営・ビジネスのROI向上」にも貢献します。
サプライチェーンDXに必要なEDIの重要要素
EDIは、過去からさまざまな接続方法が導入され現在も利用されています。今後、更に新たな接続方法が登場するでしょう。自社の要件だけで接続方法を決定することは困難であり、取引先によって異なる接続方法への対応が必要です。サプライチェーンDXを実現する為には、さらに様々な情報フローと規格をサポートする「多様な連携手法」が必要になります。
IT技術が進歩した現代でも、多くの企業が地域・業務ごとに個別システムを構築し、各取引先とのEDIを個別に構築・運用しています。結果、EDIはサイロ化されて多くの企業は費用・工数を割いている事でしょう。サプライチェーンDXを実現する為には、自社の様々なアプリケーションとの連携や、取引先との多様な連携を一本化する「デジタル連携単一基盤」を準備し、業務変更や関連システム修正が発生した際にもスピーディー且つ柔軟に適応する事が必要になります。
EDIは取引において最も鮮度と精度が高い重要な情報が流れています。サプライチェーンDXを実現する為には、この重要な情報を即座に可視化・分析する事で、取引先のパフォーマンス傾向からビジネスにおける知見を深め・洞察を高める事が必要になります。モバイルからでも「情報の可視化・分析」を実現する機能を実装する事で情報を高度に活用し、企業経営の意思決定を支援する武器になります。
サプライチェーンDXプラットフォーム
サプライチェーンDX実現には、上述した「EDIの重要要素」全てを網羅したソリューションが必要です。「ISDN終了問題」の単純なEDIシステム切り替えに留まらず、国内外全ての業界や拠点に対応し、かつ業務部門・IT部門を最適化することで競争力を高め、企業の成長をサポートし、さらに強固なセキュリティ対策を兼ね備えた「次世代のサプライチェーンDXプラットフォーム」が必要となるのです。
国内外全ての業界、業務に対応
主な業界のEDI要件への対応
一般社団法人 日本自動車工業会が標準化を進めている、NEXT-EDIの、EDIFACT、XMLといったフォーマット、プロトコルへの準拠、及び北米地域、欧州地域の標準である、EDITACT、ANSI X.12、VDAといったフォーマット、AS2、OFTP2、SFTPといったプロトコルなど、多種多様な接続方式への対応や、業界特有の業務プロセス(1:N取引プロセス、支給品プロセス、等)への対応が必要。
業界標準である、CII、XML、他フォーマット対応、全銀TLS、全銀TCP/IP、FTP、ebMS3.0及び流通BMSといった他プロトコルや、多種多様な接続方式(直接接続、業界VAN、Web、他)への対応および一般社団法人電子情報技術産業協会 (JEITA) ECセンターが発行した「Web-EDIガイドライン 」に対応するJEITA ECALGAにも準拠が必要。さらに、注文、出荷、請求といった一連の業務プロセスをサポートし、EDIデータをベースに、発注者と受注者の双方が一元的なビューで、End to Endで業務プロセスを可視化することが可能。
国内の標準化協会である石油化学工業協会の情報通信委員会(CEDI:Chemical EDI Initiative)が推進している、石化協EDIフォーマットに対応し、CEDIが推進しているグローバルのEDI標準化協会OAGi(Open Applications Group, Incorporated)に包含されたChem eStandardsにも対応が求められる。また石油・化学業界において、商社、需要家、各取引先の業界特有の複雑な業務プロセスへの対応が必要。
多くの物流企業が採用しているEDIFACT、ANSI X.12といったフォーマットに対応し、更に荷主をはじめとした取引先の業界標準・取引先個別仕様フォーマット、接続方式への対応が必要とされる。また、近年各企業のニーズが高まっている「API」接続にも対応が求めれれる。物の流れの速さ、物量が増加する中、荷主からの要求、協力企業(キャリア、フォワーダー、3PL、他)との緊密なデータ連携がとれる事で、国内物流・国際物流における荷主、協力会社からの新規業務要件、新規システム展開にも柔軟且つスピーディーな対応が必要。
金融機関との支払通知番号や請求書番号などのEDI情報に関するセキュアなデータ連携が必要。多くの金融機関が採用または、採用を予定している、株式会社NTTデータが提供する金融機関向けファームバンキングサービス「AnserDATAPORT®」などへ接続し、金融機関が指定する形式へ自動的に変換する事が求められます。また、国内のみならず、SWIFT接続や海外金融機関への直接接続にも対応が必要。
サプライチェーンDXとERP統合
基幹システムで最も利用されていると言われるSAPは、クラウド化を加速させ、既存のオンプレミス製品のサポートを2027年で終了すると発表しています。いわゆるSAP 2027年問題です。ISDNサービス終了後の3年後には、SAP 2027年問題が待っています。従来のレガシーEDIのサイロ化された受発注業務や銀行間連携もこのERPのマイグレーションのタイミングでデータ連携を進めることでDXはより加速します。特にサプライチェーンに関連するデータの統合は、ERPマイグレーションに先行して実施することで、全体の統合をよりスムーズに進めることが可能となるため大きなメリットが生まれます。 このようにISDNサービス終了による単なるネットワークのリプレイスで終わらず、ERP統合を見据えたロードマップの策定は非常に重要な要素となります。
サプライチェーンDXプラットフォームを提供するオープンテキストは、国内外における各業界のトップ企業をはじめ多くの企業に採用されています。このプラットフォーム上では、年間900兆円以上の商取引が行われている信頼と実績のあるソリューションです。ISDNサービス切り替えを機に将来を見据えた「サプライチェーンDX」を実現するベストソリューションとしてご検討下さい。
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